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もっとアメリカズカップ!

2007年スタート。ニッポンチャレンジの復活を期待しながら、イタリア、ミラノからアメリカズカップ関連情報を発信。

Ernest Bertarelli がアメリカズカップ殿堂入り

11月のアメリカズカップワールドシリーズ福岡大会までもうすぐですね。

久しぶりの更新になりますが、アメリカズカップの歴史に触れることができるニュースを見つけたのでご紹介します。

10月21日に、ニューヨークヨットクラブにあるアメリカズカップ殿堂で、スイスのアリンギのエルネスト・ベルタレッリとアイルランド出身で、1800年代に存在した第4代ダンレイヴン伯爵が新メンバーとして表彰されました。

エルネスト・ベルタレッリは、2003年にアメリカズカップの勝利チームの立役者であり、国の周りに海がないスイスのチームが、ヨーロッパに初めてカップを持ってきた素晴らしい功績を残したことが称えられました。

一方、過去の人であるLord Dunraven(ダンレイヴン)さんとは、1841年から1926年に存在した人物で、アイルランドの貴族階級出身だそうです。彼は、一度もアメリカズカップで勝利したことはありませんが、ジャーナリストや政治家という職業をもちながら、狩猟の大きなゲームや競馬のオーナーでもありました。

そして、ベテランのヘルムスマンと船長をスカウトして、2回のアメリカズカップに挑戦しました。

1895年のダンレイヴンさんの2回目のアメリカズカップ挑戦は、当時のディフェンダーであったニューヨークヨットクラブが、違法なバラスト(底荷)を積んだことを非難したことから始まりました。

ダンレヴンさん自身の抗議をどこにも持ち込むことができず、彼のチームは第1レースで負けてしまいます。しかし、第2レースで彼のチームが勝利したような結果になりましたが、レース後に彼のヨットであるバークリー3号は、ディフェンダーのヨットと衝突し、それでレースのスタートが有利になっただけであるということが判明し、勝利が無効になってしまいました。

観客ヨットの不適切な管理が原因で、衝突事故が発生したとダンレイヴンさんが非難しましたが、衝突事故のことをディフェンダーが抗議を申し出たことに気がついていませんでした。それにより、レース委員会の勝利無効の決定に、ダンレイヴンさんは激怒し、レースから撤退してしまいました。その大会は、ダンレイヴンにとって屈辱の経験となり、彼がニューヨークヨットクラブに騙されたいたと公言したことで、ヨットクラブからも名誉会員の資格を撤回されてしまいました。

しかし、ダンレイヴンさんのヨットは、確実に競争力の高いヨットでした。彼はヨットのデザインを新たなレベルに持ち上げた人物であるとヨット歴史家は評価しています。それは、その後のアメリカズカップの伝説の1つでもある紅茶王リプトン卿がアメリカズカップに挑戦した時に反映されているそうです。

結果として、ダンレイヴンさんは数人の現ニューヨークヨットクラブの会員からその功績が再評価され、こうしてニューヨークヨットクラブと密接な関係にあるアメリカズカップ殿堂博物館に記録が残ることになり、121年も続いた紛争が、ここで落ち着いたことになりました。

今回の表彰にはダンレイヴンさんの子孫が出席し、これで過去の紛争が和解されたということになったそうです。

アメリカズカップの歴史には、165年経った今もルールに関する紛争はもう当たり前のようになっています。それは、エルネスト・ベルタレッリがスイスのアリンギとして2003年にアメリカズカップを獲得し、2007年に防衛に成功し、2010年にオラクルのラリー・エリソンとの間にルールについて訴訟問題にまで発展し、最終的にオラクルがアメリカズカップの獲得に成功したというエピソードがあります。

その当時のしこりはまだ残っているようで、今回の殿堂入りセレモニーのインタビューでは、次のようなコメントを残しています。

「そろそろアメリカズカップの「オーナー」(ディフェンダー、つまりオラクルであり、ラリー・エリソン主催のゲーム)を交代する時期に来ているように思う。2017年のアメリカズカップの本戦大会では、イギリスのBARがアメリカズカップを勝利し、一度カップをイギリスに持ち帰るのがいいのではないかと思う。」

「自分自身も2017年のアメリカズカップ本戦を観戦するためにバミューダに行くつもりだが、現地のホテルや宿泊施設が不足しているように思う。ラリー・エリソン主催の今大会は、デレビ視聴率を獲得する方向で構成されているようだが、ヨットレースは、天候に非常に左右される競技でもあるので、もともとテレビ番組として、枠組みを作ること自体に無理があると思う。」

アメリカズカップにベルタレッリが戻ってくる可能性については、「絶対にないわけではない」らしいです。

ただ、過去にやるだけのとをやったという達成感も大切だと締めくくっています。

ここ数年、アリンギはヨーロッパのレースに参加しています。

歴史と現在が交わる面白いエピソードだと思いました。

また、ベルタレッリがイギリスのBARに勝利を注目しているのも面白い点ですね。

やっぱり。ヨーロッパにもう一度アメリカズカップが戻って来たら、どんな大会になるのか想像するのも、それも楽しみの一つだと思います。

長くなりましたが、それではまた!

http://www.sailingscuttlebutt.com/2016/10/22/celebrating-history-americas-cup/