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もっとアメリカズカップ!

2007年スタート。ニッポンチャレンジの復活を期待しながら、イタリア、ミラノからアメリカズカップ関連情報を発信。

アンラッキーだったニュージーランド

アメリカズカップ 第5日目

エミレーツニュージーランド × vs アリンギ ○(2-3)

今日のタイトルは非常に迷いましたが、ニュージーランドの不運なアクシデントを中心に書いていくことにしました。

レースもいよいよ1日1日の結果がさらにそれぞれのチームに重みとなる終盤にさしかかりました。

今日は、非常に良い天候で、風速も14-16ノット。

レース行うには理想的な天候と言われ、スタート前は、アリンギのヨットがどのようなレース展開を行うかが注目されました。

アリンギのSUI-100は、特にこのバレンシアの気候と風速15ノット前後の状況において適するように設計されているため、今日のレースでどこまでニュージーランドに差を付けて早く走行できるのかというところが見所でした。

一方のニュージーランドも、ルイヴィトンカップの終了後、改造を行った船をアメリカズカップ第1戦から使っています。

スタートはとてもダイナミックで、レイラインを超えてコース右寄りにいる観客船の間をはうようにして2艘のヨットが大きな走りをします。

スタートラインを先に切ったのはニュージーランド。Dean Bakerらしい、攻撃的で迷いのない素晴しいスタートでした。時間にして5秒差。 アリンギはコースの右寄り、ニュージーランドはそのアリンギにぴったりとくっつく形で平行ラインを描くように走行します。

イタリア番組の解説者Paul Cayardも、今日はDean Bakerのスタートに大変満足した様子で、Dean Bakerをほめまくりです。

そして、第1ボアをニュージーランドが最初に回り、アリンギはその後を追いかけるかたちでレースは展開しますが、第2レグ途中で何やらニュージーランドに動きが。

使用しているスピネーカーに穴があいたので、交換したいんだということはすぐに誰もが理解できましたが、風速14ノットを走る船には大波が何度も容赦なく両チームの船に襲いかかってくる中での交換作業は、そう簡単ではないことを映像から理解できます。

波に大揺れするヨットが、スピネーカーの交換時に一人のクルーが登っているスピネーカーポールのバランスを崩し、スピネーカーポールが海に向かって大きく動いてしまいます。 その瞬間にニュージーランドは、交換作業のコントロールを失います。

破れたスピネーカーと2枚目のスピネーカーが、うまく取り戻せません。 

「いったいどうなっちゃうの?」と思っていたら、3枚目のスピネーカー(ジェネカー)が登場。

船内にこんなに用意がされていることにびっくりしましたし、用意というものはあらゆるシチュエーションに対応できるまで念入りに行われていることにすごく感心してしまいました。

うまく張れるような状態にはなりましたが、不運なことに3枚目のスピネーカーがこんがらがってしまって、開いてくれません!

一度タッキングを行い、なんとか3枚目のスピネーカーが無事に開きましたが、最初に穴があいたスピネーカーが、マストの頂上にくっついたまま。この破れたスピネーカーは、海に向かって落とされ、ニュージーランドのサポートのゴムボートがすぐに駆けつけ、これを回収。

その間、アリンギはニュージーランドを追い越してしまい、アリンギはニュージーランドに対して110メートルほどのリードを奪います。

ニュージーランドを襲ったこのアクシデントは、誰の目にも痛々しく見えたに違いありません。

でも、予期しないことって起こる可能性があって、どれだけ冷静に敏速に対応できるかがこのスポーツの醍醐味の一つかもしれません。

18人のクルーが一つの船を動かすことって想像以上に大変である部分も教えてくれました。

レースはアリンギのリードを中心に展開していきますが、途中で80メートル90メートルまで広がるリードも、アクシデント後のニュージーランドは決してあきらめません。すぐに58メートルまで距離を縮める様子が第3レグ、第4レグでは何度も見られました。

この様子は、アリンギの船とニュージーランドの船は大差がなく、最後の最後まで戦うことの出来る2艘であることの証明です。

実際、レースを見ていてアリンギを応援する目から見るともうちょっと決定的なリードはつけられなかったのかと思うような内容でしたが、それだけ両チームの船の性能の高さと、ニュージーランドの決して譲らない精神が最後の最後までレースを目のはなせない展開にしたのだと思います。

結果はアリンギが勝ちました。

これで3-2。

この土曜日、日曜日もレースから目が離せません!