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もっとアメリカズカップ!

2007年スタート。ニッポンチャレンジの復活を期待しながら、イタリア、ミラノからアメリカズカップ関連情報を発信。

ついに死亡事故が発生しました。

久しぶりの投稿ですが、サンフランシスコで死亡事故が発生したことをお伝えしなければなりません。

現地時間5月9日、サンフランシスコでトレーニングをしていたアルテミス レーシングのAC72艇が海上で転覆し、11人のクルーのうち、英国人のアンドリュー・シンプソンさん(ニックネームは、アメリカの人気アニメ「シンプソン」にちなんで、「バート」)が死亡しました。享年36歳。

アンドリュー・シンプソンは、去年のロンドンオリンピックでは銀メダル、北京オリンピックでは金メダルを獲得したイギリスの重要なセーラーとして活躍していました。

公式発表によると、AC72が転覆した際にシンプソンさんは船の下から脱出することができず、船上にいるクルー各自が携帯する酸素ボンベ(15分間有効)も、使えなかった状況にあり、海上と陸上での心肺蘇生も手遅れとなり、亡くなってしまったということです。

このニュースはイタリアのニュース番組でも、今日一日報道されるほどでした。

アメリカズカップの関係者およびヨット界に大きなショックになりました。

また、イタリアの報道局によると、ルナロッサも今回の死亡事故を受けて、オーナーのPatrizio Bertelli氏を筆頭にチーム全体が今後の方針についてこの週末に熟考し、アメリカズカップのレース内容に安全面で何かしらの「保証」が打ち出されなければ、最悪の事態としてルナロッサはチームとして今後のレース参加を辞退する可能性もあるということです。

Patrizio Bertelli氏の今日発表されたコメントは、以下の通りです。

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死亡事故発生後、ルナロッサでも電話による長い会議が行われました。

チームとして、今回の出来事を深刻に受け止めて、あらゆる面からもう一度、アメリカズカップについて、考え直す必要があるという結論に至りました。

私たちプラダは、スポンサーとして、チームに今後のレース参加を続けるのか、辞めるのかという判断について自由な決断権を残しました。

しかし、チームとして、すべてをあきらめるという可能性もあります。

今回の死亡事故は、アメリカズカップがオラクルの強い要望により、巨大カタマランAC72の採用が決まったものの、様々な議論が繰り返されてきた中で大きなショックとなる事故です。

AC72が採用決定になった時に、ルナロッサとして、アメリカズカップが行き詰まりになるスポーツになりかねないことをすぐに考えました。

それは、現代の若い世代を象徴するかのように、物事を深く考えずに、リスクに挑むような姿勢ではないかと。

しかし、成熟した大人としては、やはり物事にはそれぞれ意味があるという事を示すべきでしょう。

新しいアメリカズカップのスタイルには、とても大きなリスクが発生するのですから、同等の保証も設定されるのが当然でしょう。

カタマランでのレースが開始されて、具体的になったリスクがあります。

カタマランを使えば使うほど、大きさが大きくなればなるほど、ヨットが持つ機能(速さ、力)が想像以上であることが分かり始めてきます。

AC72を操縦することは、F1の車を運転することと同じような事です。

強度のスピードを如何に操作するか。それが、問題なのです。

アメリカズカップが新しいスタイルになったことは、チャレンジャーチームも敏感にさせることになり、今回のチャレンジャーチームはわずか4チーム(ルナロッサ、エミレーツ、アルテミス、チームコレア)。これらのチームは、オラクルの最終チャレンジャーを決める7月4日から開催されるルイヴィトンカップへの参加を決めています。

ルナロッサとしてのプラダの挑戦は、不安を伴った決定ではあったものの徐々に実力を蓄えて、アメリカズカップに向かって前向きに向かって行く段階にあります。

今後のレースを続けるには、何かしらの変更や修正が必要でしょう。

チームとしては、ここ数日間、レースに参加する上で必要な保証、何が安全性を保証する上で必要なのかについて、しっかりと検討します。

その内容と、大会の趣旨が合わないようであるならば、私たちは辞退します。

今回の死亡事故をとても残念に思っています。リスクが伴う可能性が大きいならば、それなりの対応措置も必要です。

F1レースや、モーターレースのように医療体制が整っている事は、必要最低条件でしょう。

一緒に転覆したクルーだけでは、シンプソン氏を海から助け出すことすら出来なかったのですから。

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長いですが、Patrizio Bertelli氏のコメントをご紹介できるのは貴重だと思います。

モノハルの時に、ニッポンチャレンジの南波氏が遭難してしまった事故も思い出しました。

それを考えると、事故と常に背中合わせなわけで、

カタマランだから、モノハルだからという見方よりも、今回はスポーツのあり方について冷静に関係者が考え直す必要がある時期に差し掛かったのかもしれません。

最後に関係リンクを追加します。

ー 事故当日のアメリカズカップ公式サイト

http://www.americascup.com/en/news/8/teams/15517/artemis-racing-capsize-ac72-during-training

ー アンドリュー・シンプソン氏への追悼ページ

http://www.americascup.com/en/news/15525/tributes-pour-in-for-andrew-bart-simpson/15525/tributes-pour-in-for-andrew-bart-simpson

ー アルテミス レーシングの公式サイト

http://artemis-racing.americascup.com