5月17日ルナロッサ会見内容
先日の投稿でも少し触れましたが、5月17日(金)にルナロッサのベースキャンプであるサンフランシスコのアラメダで、公式記者会見が開かれました。
ルナロッサのクルーだけでなく、オーナーのベルテッリ氏を筆頭に、弁護士、技術者を含めた全ての関係者がAC72の前に勢揃いした会見でした。
ルナロッサからの大切なメッセージが語られているので、会見の全内容をお伝えします。
*記者会見を開いた理由
アルテミスの死亡事故から1週間経過したことで、ルナロッサの立場を明確にするため。
過去のアメリカズカップ参戦において、ルナロッサでもヨットの破損など様々なアクシデントに遭遇したが、今回のアルテミスの死亡事故は、これまでにない深刻な事故であったと受け止めている。
ルナロッサはアメリカズカップの伝統と、スポーツマンシップを尊重し、今大会に向けても準備をしてきた。
大会前に制定されるプロトコール(規定)は、各チームからの多数一致によってのみ修正や変更が認められるものであることを、改めて念頭に置く。
ルナロッサは、基本的にChallenge Of recordで定めらた、プロトコールに異議はない。
問題は、チームとして今後何ができるのか、アメリカズカップとして何が発生し得るのかを深く掘り下げることである。
*5月12日に開催者にチームとしての要望をまとめて連絡。
<内容>
1)船上のセーラーの安全確保の強化
ヘルメットの着用や、その他必要とされる保護具の用意、身体保護の強化
海上に救急隊を導入する
地上(救急車)、海上(ダイバー)、空中(搬送用ヘリコプター)など、セーリングを監視する救急隊を導入する。
2)速度の制限
ニューポートで制定されたプロトコールにおいて、速度制限はラウンドロビンで最高25ノット、ルイヴィトンカップでは最高28ノットと決められている。
ルナロッサの提案は、最高速度を20ノットにまで下げること。
決勝となるアメリカズカップ本戦では、現状で33ノットの決まりだが、ルナロッサの提案は25ノット。
これは、スピードにセーラーが対応できる範囲を考えた上での提案。
3)スタート時の風力
これは、検討が必要だが、ルナロッサはスタート時の風力が基準よりも2ノット強くなったらレースのスタートを見送ることを提案。
以上の要望に対して、17日の時点でルナロッサはアメリカズカップ開催者から具体的な返答は一つも受けておらず、調査委員会で検討するとのこと。
開催者側は、プロトコールの修正や変更を許可する様な意図は、今のところ全くないと宣言しており、開催者側としては、海上での安全や、AC72の構造、風力のコンディションにおいて、どのような推薦を出すか分析中とのこと。
ただし、この動きに置いて、どのような指示(推薦)がどこの誰から出るのか、全くはっきりしていないのが事実であり、ルナロッサにとって、とても不可解である。
17日のチーム全体ミーティングで、チームとして今後どのような方針でいくかについて話した内容は以下の通り。
1)メンタル面での安心
セーラーが自信を持ってレースに望むことが最も重要なので、セーラーがカタマランの操縦に不安はないかを確認したところ、セーラーはチームを信頼しており、レースに挑むことに自信を持っていると答えた。
2)安全器具類を増やす
補助のゴムボートの他に必要な安全器具を確保する。
3)最高速度を制限する
プロトコールで決められた風力基準に従ってレースをする。
ルナロッサは、以上の方針と、アメリカズカップのプロトコールに対して、いかなる修正や変更がある場合、それがあるチームに有利に働くようなプロトコールの修正が行われる様な行為に対して、一切受け入れない。
アメリカズカップに参加している、それぞれのチームは、お互いに知り合いであり、友人関係にあるのに、人間関係が二の次になる様な決定や、「上から」決められる変更に対しては、寛容に受け入れられない。
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以上が、ベルテッリ氏が、会見で話した内容です。
どうやら、内部で良くない動きが動いているような印象を受ける会見内容です。
これで、なぜ5月17日にルナロッサが記者会見を開いたのかも、日本の皆さんにもお分かり頂ければうれしく思います。
他のチームが、何か新たに行動を起こしたことは、特につかんでいませんが、この会見でベルテッリ氏が話した内容に、私自身は共感できました。
セーラーの安全、安全を守るための速度制限。とても大切だと思いました。
会見を通じて、自身とチームのポジションをはっきりさせたベルテッリ氏に感心させられました。
会見の様子はYoutubeで見ることができます。(英語、イタリア語)